基礎工事と構造計算 | CoCoDA – BLOSSOM DESIGN-

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2023.05.26

基礎工事と構造計算

建物を建てる場合に重要な部分!
それは基礎部分で、一番注意して作業を行います。
私たちも一番注意して点検します。

なぜなら見えない部分であるため、適切な工事かどうか後から確認が難しい場所だからです。

しっかりした基礎造りには、施工を正しいやり方で行う必要があります。

また、実は木造2階建住宅のほとんどが、基礎部分に関する科学的計算がされていません。
過去の経験則で施工されている実態も踏まえて、基礎工事と構造計算の話をしたいと思います。

まず最初に基礎工事の種類と工程を、ただいま絶賛建設中の現場より、ご紹介します!

基礎工事の種類と工程

(1)掘削工事

掘削工事(土工事)とは、地表面より下の構造をつくるために土を掘って別の場所に搬出する工事。
掘削工事を行わなければ地面より下にある基礎躯体(鉄筋とコンクリートの構造)をつくれないので、建築で掘削工事は必須となります。
掘削工事は「根切り」とも言います。

(2)砕石敷き

根切り(掘削工事)の後、砕石と呼ばれる石を敷き詰め、ランマーと呼ばれる機械を使って地盤を締め固めます。
地盤をしっかりと締固めることで、建物がすぐに沈んでしまうことを防止します。
地盤を占め固める作業のことを「地業(じぎょう)」と呼びます。

(3)捨てコンクリートを流す

地業(じぎょう:砕石敷き)で地盤を固めたら、建築作業がしやすくなるようコンクリートを流すことがあります。
このときに流すコンクリートのことを「捨てコンクリート」と呼び、建物強度に直接関わりませんが、工事を進めやすくする上でとても大切な作業です。

(4)配筋

工事現場でいわゆるよく見るこの鉄格子のようなもの。
この組み立てを「配筋」と呼び、基礎の寿命や強度に直接影響がある非常に重要な工程です。

基礎(鉄筋コンクリート造)は主に”コンクリート”と”鉄筋”という二つの素材でできています。
鉄筋コンクリート造における『コンクリート』の役割は圧縮力に対する抵抗であり、『鉄筋』の役割は引張力に対する抵抗だと言えます。

双方の利点が合わさることで、地震などの様々な方向からの外圧力に対して非常に強固な構造体になると言えるのです。
新築住宅には『住宅瑕疵担保責任保険』が設定されており、この保険適用のため一番最初の現場検査も、実はこの「基礎配筋工事」完了時に行われます。

ここで配筋ルールが二つあることをご紹介します。

① 建築基準法施行令によって ”過去の経験則から定められた” 配筋の施工ルール

② 構造計算(許容応力度計算)の “科学的検証による配筋計画で” 施工するルール

だんだん難しくなってきました💦

日本の建築基準法では、一般的な木造住宅の2階建て以下で、500平方メートル以下の家は、②の構造計算が義務づけられていません。
結果、品確法(長期優良住宅の認定制度)で耐震等級3を取得していても、構造計算は実施されず、実は基礎配筋については”過去の経験則”で今も施工されています。

今回は、構造計算の細かな実施要件の詳しい説明は割愛するとして、ほとんどの2階建て木造一般住宅は構造計算を実施していないのが実態です。

なお、今回の現場は3階建・木造のアパート建設のため構造計算を実施しています。
写真ではまだ配筋工事の初期段階です。

建築基準法施工令による基礎基準

この2023年現在もなお、日本全国で建てられている木造住宅の8割以上は構造計算をしなくても建築許可が下りる建物です。
その中には長期優良住宅の認定物件も含まれています。


多くの住宅会社は、費用と時間とコストがかかる構造計算は実施していません。
基礎にいたっては、断面形状について ”過去の経験則から定められた図面” つまり嫌な言い方をすると『使いまわし図面』で施工することさえあります。

建築基準法での基礎に関するルールは、建築基準の簡易計算の対象から外れているだけでなく、基礎のサイズと鉄筋の太さや配筋ピッチの最低基準が決まっているだけなのです。
結果『どの建物でも基礎の断面形状は同じものが使い回される』といった慣習が生まれています。

構造計算とは

『建物の構造安全性を科学的に検証し確認するための計算』のことを構造計算と言います。
そう聞くと、構造計算(許容応力度計算)は、当たり前! 当然実施している! と思いますよね!
願いたいですよね! 

でも、ここまで読み進めた皆さんは『ほとんどの木造住宅では実施していない』事実をおわかりいただけたと思います。

構造計算の実施割合と安全性について

下の図を見てもわかるように、構造計算でしか基礎設計の個別検討は実施されていません。

たとえ長期優良住宅認定であっても、基礎設計については①のルールを利用しているケースがほとんどです。
ですが、より耐震性に効果を期待できるのは構造計算による配筋計画です。

念のため、けっして長期優良住宅制度を否定するものではありません。

耐震性能のみならず昨今の住宅に必要な性能を客観的な指標で、消費者が理解しやすく、かつ事業者側も、均一の性能・品質が確保しやすい優れた制度となっています。


すこし脱線しますが、長期優良住宅の制度を見ておきましょう。

長期優良住宅とは

長期優良住宅制度(長期優良住宅の普及の促進に関する法律『長期優良住宅法』に基づく制度)とは、2009年(平成21年)6月に施行された法制度です。

それまで日本の住宅慣習といえば「スクラップ&ビルド型」、つまり「30年もしたら壊して新しく建て直そう」という概念・意識に基づいて建てられていました。

それに対して、長期優良住宅制度は「ストック型」、「長期にわたって住み続けることができる家づくりを普及させよう」として設けられたものです。

従前の概念・意識による「スクラップ&ビルド」の家づくり慣習では、住宅解体時の産業廃棄物やエネルギーの損失があり、環境負荷も大きくなります。
また資産価値が急速に目減りし、高額の再建築費用が発生する旧来型の慣習は、人々の資産形成の面からも問題がありました。


長期優良住宅による『ストック型の家づくり』では、地球にも社会経済にも、そして個人にも優しい家造りとして、今回話題の『耐震性』以外にも長期利用を前提とした維持管理性能・省エネ性能・劣化対策など10項目におよぶ性能表示がなされています。

長期優良住宅の認定を得たマイホームを建設すると、日々のメリットとして住戸環境が良く快適で、エネルギー消費量が抑えられるので、頭痛のタネにもなっている「電気代」も節約できるだけでなく、地震に強く、税制上の優遇・補助金・住宅ローンの金利優遇などの特典まで用意されています。
詳細はまた別機会に。

つまり、優良住宅の建築コスト割増しを、これら一帯制度で施主側の実質負担を和らげているのです。

熊本地震を経て

阪神淡路大震災、東日本大震災とたびたび地震に襲われる日本。
近年だと2016年に発生した熊本地震。
震度7という非常に大きな揺れが2回も発生しました。


これまで比較的安全だとされてきた2000年以降の「新耐震基準」の建物が多くの被害を受け、さらに今回話題の「長期優良住宅」に認定されていた建物が倒壊してしまった事実に住宅業界にも大きな衝撃が走りました。


おそらく構造計算をしていれば、倒壊を防げたかもしれませんが、この認定されていた建物は構造計算がされていませんでした。

構造計算(許容応力度計算)による科学的計算に基づいた「基礎」が、実はもっとも耐震構造の計画には有効であることも、今日は知って頂きたかった点です。

実は構造計算(許容応力度計算)の有無で、検討できる建物プランの自由度も、かなり制限される事実が現場にはあります。
そのようなお話を次回コラムでお話ししたいと思います。