土地と建物価格のインフレ圧力を販売価格に転嫁できない現状
飯田グループホールディングスの最新決算から、分譲住宅市場の現状と将来の土地価格に関する動向が浮き彫りになりました。
同社は戸建て分譲住宅事業を中心に展開しており、全国にわたる広範な事業規模を持っています。
しかし、2024年3月期の業績見通しでは、売上、営業利益、純利益すべてが大幅に下方修正されました。
これは、インフレと原価上昇が続く中で、販売価格への転嫁が十分にできていないためです。
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原価上昇と価格転嫁の難しさ
都市部では、土地・建物の原価がそれぞれ146万円・96万円増加し、計242万円のコスト増となっていますが、販売価格への転嫁は182万円にとどまっています。
地方部でも土地の原価が33万円、建物原価が116万円、計149万円の増加に対し、販売価格への転嫁は59万円に過ぎません。
このように、原価上昇を十分に価格に反映できていない状況が続いています。
販売不振と在庫の増加
原価上昇の一方で、販売不振が続いているため、在庫が増加しています。
2021年3月期時点で1万6273棟だった未契約在庫は、2023年3月期には2万5767棟まで増加しました。
これにより、売上が減少し、利益も大幅に悪化しています。
特に、2023年3月期の粗利率は16.1%に低下し、2022年3月期の20.4%から大幅に減少しました。
土地価格下落の要因
これらの状況から、今後土地価格が下落する可能性が高まっています。
その要因として以下の点が挙げられます。
①販売不振による需要減少
インフレが進む中で住宅需要が減少しています。
販売価格の引き下げにもかかわらず、在庫が増加し続けていることは、需要が低迷していることを示しています。
需要の低迷は、土地価格の下落圧力を強めます。
②過剰在庫の解消のための価格調整
飯田グループホールディングスは、過剰在庫を解消するために販売価格を引き下げる必要があります。
この価格調整は、土地価格にも波及する可能性があります。
特に、地方エリアでは需要が冷え込んでおり、価格調整が必要不可欠です。
③資金回収のための低収益販売
同社は、低収益でも販売を進めることで資金を回収し、新たな投資に充てる方針です。
この戦略により、市場全体の土地価格が下落する可能性があります。
固定費のカバーを優先するために、赤字覚悟での販売を続けざるを得ない状況が続けば、今後の分譲用地仕入れ価格への影響は避けられません。
長期的な視点
長期的には、地価の上昇と資材価格の高騰が続く中で、市場の需給バランスが崩れることが予想されます。
飯田グループホールディングスのような日本最大の建売販売事業者が、低収益でも販売を継続しなければならない状況が続くと、土地価格の下落圧力は一層強まります。
また、2022年3月期以降、企業物価指数が高止まりしていることも、コスト面の改善がすぐには見込めない理由の一つです。
このため、しばらくの間、土地価格がこれまで通りの上昇トレンドから転換点を迎え、下落する要因になると予想されます。
2024年3月期の飯田グループホールディングスの純利益予想700億円から310億円の下方修正は、販売不振と在庫の増加、価格転嫁の難しさが続く不動産市場環境を投影しており、今後の土地価格の動向として、分譲住宅の土地仕入れ価格が下落する要因となってきました。
この日本最大手の分譲住宅企業の動向を起点として、2024年は地価動向の反転の年となるかもしれません。