このブログは一級建築士による執筆です。

住宅における3つの不快
人は、自分の健康に悪影響がある環境を、“不快”と感じることができます。
そして住宅における「3つの不快」を検証すると、健康へのリスクがあることが数値として現れています。
その不快は、人の健康を蝕み、死に直結する重大な疾患を引き起こすこともあります。
室内の温度差によって引き起こされるヒートショックはよく聞かれる話ですし
ヒートショックが原因での年間死亡者数は、実は年間の交通事故死亡者数を上回っています。
室温、湿度を保てない住宅はダニ、カビ、ウィルスを発生させています。
幼少期に喘息やアトピーをも引き起こしてしまいますし、大人の身体にも影響が出ます。
室温と健康リスク

室温と健康リスクの関係が、データで示されるようになり、わかりやすくなってきました。
- 室温18℃以下 → 健康リスク
- 室温16℃以下 → 呼吸器疾患に影響
- 室温12℃以下 → 血圧上昇
- 室温 5℃以下 → 低体温症など身体への被害が現れる
室温が高すぎても問題です。
夏場は室内での熱中症もひきおこし、断熱性の低い住宅は屋外よりも温度が上がることがあります。
イギリスの保健省指針では18℃から21℃を推奨しています。
WHOは2009年に室内の寒さは、健康に影響を及ぼすと指摘しています。
つまり室温は20°あたりから25°くらいが快適ですし、健康にも良い。となります。
湿度と健康リスク
湿度では
- 50%が快適
- 60%ダニが発生
- 70%カビが発生
- ウィルスは40%以下・70%以上で繁殖しやすい
ということがわかっています。
つまり、心地よい室温と言われている20℃~25℃と合わせて、湿度は45%~55%に保つことで健康で過ごしやすい室内環境が得られます。
戦後の日本
昭和20年以降、震災や戦後復興があり、大量に住宅供給が求められた時代がありました。
残念ながら、戦後は住まいを確保することが優先で「人命を守る」という本来の機能がおろそかになり、大量生産されて、他国では少数派なハウスメーカー・建売(たてうり)が、この日本の大量生産を支えて、それが既得権化してきました。
理由はローコストと作業効率を一番に考え、消費者の無知に付け入った「儲け」に走ったからだと思います。
いつの間にか、日本の風土に合っている土壁・漆喰・珪藻土・瓦屋根も襖・障子も、姿を見る機会が減ったと思いませんか?
世界と日本の住宅基準
日本のエネルギー政策はドイツから20年遅れていると言われています。
他の先進国の気密・断熱性能は、日本のものより遥かに高い基準を法律で定めています。
日本では四季があるため、一年を通して大きな気温の変化があります。
さらに高温多湿といった過酷な気候の中であるにも関わらず、日本風土に適した古来からある施工方法は、効率化の前で風前の灯火となっています。
そして本来、日本では、先進国以上の基準で建築されなければ快適性を得られないし、健康な長寿を全うすることができないわけです。
住宅を供給する側の心得

近年、消費電力をおさえた生活、化石燃料をできるだけ燃やさないで生きることが、SDGsの流れからも重視される中で、「命を守る・健康を育む」という意味でもIOT技術革新は素晴らしいものだと思います。スマートフォンと連動して家族が帰宅する事を感知して、室内環境を準備してくれます。
土壁・珪藻土・漆喰壁など見直される機会やデザイン性を帯びた現代の仕様に昇華した素材も見受けられます。

効率やら儲けやら重視する過程で、大切な技術・雇用を中国やアジア圏に譲り失った平成の時代も過ぎて、令和の昨今は円安も相まって、もう一度、日本人のための「日本のモノづくり」が復興できるのではないかと期待が止みません。
室温・湿度。
今後も私たちは、住宅に携わる日本人として、IOTの知見や、日本古来の素材、世界の高度な技術・性能基準も取り入れながら、健康で心地良い住宅のサポートができたらと思います。