難しい設備・構造に頼らない「省エネ」建築 | CoCoDA – BLOSSOM DESIGN-

BLOG

2023.03.25

難しい設備・構造に頼らない「省エネ」建築

自然の持つ快適さと共生できる住宅

初めまして、一級建築士として数多くの住宅やマンションの設計に携わってきた北野です。
新築戸建やリノベーションの参考になる記事を(代表の)中濱から依頼されましたが、
ブログ投稿は初体験なので、どのように書いていいのやら。。と悩んでも仕方ないので
まずは最近世間を苦しめている「電気代」について、建築視点で綴ってみたいと思います!

「電気代が怖い」

中濱が最近の電気料金の請求額を見てボヤいています。

ウクライナ情勢や円安の影響で電気料金の値上りは何となく知ってはいましたが
この上がり幅は予想の域をはるかに超えていて、実に2倍近くに跳ね上がったそうです💦。
恐らく今、同じような経験をしておられる方も多いはず。

電力会社やプランの見直し、こまめな節電対策などはもちろん大事。
新築時なら、基本構造や、高気密・高断熱、全館空調システムなど、それも予算がゆるせば効果大!
それだと”ありがち”なので今回は建築士ならではの”切り口”
「空調効率を高める建築の工夫」というテーマで考えてみました。

空調効率を高める建築の工夫

僕はよく「LDKは広々と明るく開放的な空間にしたい」というお客様のご要望を頂きます。
そのご要望に対してのアンサーは

・大きな吹抜けや天窓を設ける
・玄関や洗面所・廊下などの隣接する空間をリビング一体として取り込んだ間取りを提案する


こんな感じでしょうか。

ですが、こういった間取りはどうしても空調効率が悪くなりがちです。

そこで「大空間でも空調効率を高める方法」をいくつかまとめてみました。

①可動間仕切りで広々空間をフレキシブルに区切る

例えばリビングだけを仕切れるようにして、空調範囲を限定するという方法があります。
気候の良い時期は開けっ放し、空調が必要な時にさっと仕切れる可動間仕切りのようなものです。

その場合、ガラスやアクリル板など透過性のある素材がベストですが
予算であったり、リフォームで現場状況に制限等がある場合は、ロールスクリーンやカーテンなんかでも良いと思います。

②カウンターアローファン(送風機)とダクト

全館空調システムのような高価な空調設備に頼るのも良いですが
高額で複雑な機械には頼りたくないのが設計士の心情。。

 ☑リーズナブル
 ☑効率的
 ☑長持ち(故障がすくない)


そんな空調方法をご紹介したいと思います。

それは「送風機(カウンターアローファン)とダクト」で、下図のように構造はとてもシンプル。

【夏】吹抜けの例として、夏場は下階から上階(吹抜け)へ冷気を搬送。
【冬】冬場はファンを逆回転して上階(吹抜け)の暖気を下階へ搬送。

厳密な話はさておき、暖かい空気は(軽いため)上昇気流となって上がっていく。
冷たい空気は(重いため)下降気流となり下がっていく。。

こんな自然現象に送風機が助けるシンプルな構造のため
新築時なら導入費用はエアコン1台購入するより安い!
このように、大空間でも最低限の設備の組み合わせで快適に暮らせてしまいます。

また空調が整いやすいリビングと、寒暖の影響をダイレクトに受けがちな洗面脱衣室など、ヨコにつなぐことも可能です。

出展:三菱電機カウンターアローファン製品ページ

③2階や吹抜けの熱気対策

特に夏場。屋根の近い2階建て2階部分や、天井が高い吹抜け部分には熱気がこもります。
この熱気を逃がしてあげない限り、いくら空調をしても効率が下がってしまいます。
熱気を逃がす対策(換気対策)、これもシンプルです。

・天井に近い位置に開閉可能な窓を設置
・吹抜け上部に開閉可能な窓を設置
・開閉可能な天窓も効果あり
 ※この場合はロールスクリーンなどの遮蔽対策は必須です。

また、シーリングファンも有効ですが、大きな構造物なので室内意匠や、照明器具の位置との兼ね合い
あと掃除方法など慎重に検討していく必要があります。

吹き抜けリビングの東側にルーバー式窓を配置

④夏の間、冬の間 ~ネコから学ぶ暮らし

これは少し特殊な事例になりますが、個人的に大好物な事例です。

2階建てで、唯一仕切られているのはトイレとお風呂のみ
という住宅を設計したことがあります。

上記①②③に記載している”自然と共生した空調・換気対策”は講じながらも、リビングを「夏の間・冬の間」の2つに分散配置しました。

夏場は1階のほうが涼しいので1階に「夏の間」
冬場は2階のほうが温かいので2階に「冬の間」を。上下階の温度差を利用した計画です。

1階2階それぞれにリビング利用できる空間の確保ですから、決して帖数(㎡数)は大きくないです。
が、そもそもオープンな間取りなので閉塞感は一切ありません。

季節によって家族が集まる空間が異なると、室内・外側共に景色や空気が変化します。
キンモクセイの香りに季節を感じるのと似ていて、同じ家なのに季節を感じて新鮮な気持ちになります。

まるで猫のように快適な居場所を探して暮らすというのも空調効率を高める方法のひとつではないでしょうか。

まとめ

「空調効率を高める建築の工夫」とは「自然の持つ快適さと共生できる住宅」だと考えています。
北野の初執筆のブログ記事、いかがでしたか?

ご希望のテーマがあれば教えて頂けますと幸いです。これからもよろしくお願いします。