一つしかない土地を一人に譲る相対取引ですので、土地の価格はまさに時価です。
その価格の決まり方は、欲しい人(需要)と譲りたい人(供給)のバランス。
その強弱で決定されます。
しかも、土地の条件はそれぞれ違っていますから、比較もなかなか難しいです。
これを不動産の希少性・個別性といいます。
Contents
一物四価について
「一物四価」といって、一つの土地には四つの価格があります。
実勢価格・公示地価・路線価・固定資産税評価の4つの価格を指します。
今回は、実際に売買される時価(実勢価格)についてのお話です。
固定資産税や都市計画税、相続税や贈与税など、税金を納める際には税率があります。
その税率をかける対象が公示地価・路線価などの価格となり、一般的には実勢価格から下回った価格になりがちです。
今回詳しく話したいポイントは実勢価格の決まるフローです。
実勢価格が決まるまで
不動産業界の体感による相場
実勢価格を誰が査定するかというと、主に不動産会社・不動産仲介会社です。
仕事柄、取引場面に立ち会う回数を重ねるうちに
購入検討者がどれくらいの予算感でその地域の土地を欲しているのか
今市場に出ている土地がどの程度引き合いがあるのか、相場を体感しています。
レインズによるデータ相場
そうして日々、市場取引を日本の不動産業界として記録する機関があります。
「REINS(レインズ)」です。
「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で
簡単にいうと日本に唯一の不動産業界団体が運営する不動産の市場です。
不動産会社だけがアクセスできる「WEB上の不動産市場」で国土交通大臣認定の組織となっています。
実勢価格の流れ
実勢価格(時価)は実際に売買が成立したその価格そのものを指しますので、そこに行きつくまでにはいくつかの価格定義が存在します。
- 希望価格::所有者が売りたいと思っている価格
- 市場価格::不動産業者の体感相場やレインズ情報
- 売出し価格:売主の事情と希望価格など
個別に加味した販売価格 - 成約価格::実際に取引となった価格(実勢価格)
市場価格や売出し価格を決定する際の「希少性・個別性」についても触れておきます。
希少性を考慮した相場
具体的に土地の希少性を見ていきましょう。
・駅や学校、買物施設などからの距離
・通勤通学路の安全性・快適性
・敷地間口や奥行の長さ、敷地の形状
・道路幅や接道方位
・道路と敷地の高低差
・隣接する敷地との高低差
・陽当たり
・隣接する家の状況や街の雰囲気
・眺望や借景、風通り
・建築基準法の制限内容
・現況の見栄え
・トラブル要素の有無
土地は1つとして同じ条件がないため、それぞれ希少性があり、そこを評価していきます。
評価の際は、その希少性を考慮した実勢価格(時価)が出されます。
最近は算定にAIも活用されています。
不動産マーケットに出品した際に適切な購入検討者の反応があり、数カ月内には一組の購入者が決まるであろうと予想できる価格、この価格を「市場価格」と言います。
個別性を考慮した相場
売買にはそれぞれ事情があります。
売主はいつまでに売りたいのか、急いで売らなくても良いのか、絶対に3カ月後に契約しておきたいのか、など
計画的な事情もあれば、突発的な事情もあります。
計画的な売却とは
買い替え 住み替え 資産整理 相続対策 など
突発的な売却とは
債務弁済 相続発生に伴う換金 離婚 など
最後は「ご縁」で決まる
過去の売買の事例をもとに、土地の個別性・希少性を加味して市場価格を導き、あとは「思い」により売り出し価格を決定する。
そのあとは、どのような購入検討者との出会いで成約するのかは、その時々によって違います。
私たちは「ご縁」とよく言います。
自分の土地は特別だと高めに売出しをして成功する方もおられましたし
市場価格に合わせて売出したのに、長期間売れない事例もありました。
売り出した瞬間に現れた購入希望者を断って、そのあと1年間全く買付けが入らないこともあったり。
あいまいな表現かもしれませんが、不動産取引は「ご縁」だと思います。
ちなみに金融機関も実勢価格に詳しい
なぜなら融資の際には「担保」といって
「万一貸したお金を返せなくなった場合は対象の不動産を銀行(保証会社)は借金のカタにもらい受けますよ」
という融資方法をとるので、おのずと不動産の実勢価格が重要になり、詳しいわけです。
まとめ
以上、今回は一物四価の中で実勢価格=実際に売買される時価についてのお話でした。
実勢価格が決まるまでは
・不動産業界の体感による相場
・レインズによるデータ相場
・希少性を考慮した相場
・個別性を考慮した相場
が考慮されて価格が算出されます。
最後は「ご縁」というところは、読まれている方には「!!!」な話ですが
それも、土地のお取引のそれぞれに一期一会があり、ストーリーがあるゆえのことです。
これから土地を売られる方、探される方の参考になれば幸いです。